◆大柏川第一調節池緑地だより
(2018年〜2019年)


 大柏川調節池緑地の自然
1年かけ調査を開始 元教諭の山アさん

 大雨のときは治水対策上の遊水池になる北方町4丁目の「大柏川第一調節池緑地」。この緑地の植生や生き物などを定期的に調査しようと、 一人の元教諭が活動を始めた。植物、鳥、昆虫の生態や分布、敷地内に数カ所ある池の変化などを調べてレポートを作成、ここを訪れた人に配布している。
 活動を始めたのは市川学園市川高校の元教諭の山ア秀雄さん(83歳)。専門は昆虫で、現在、市川市史編さん委員会委員(自然)。かつては本紙「市川ジャーナル」に「市川動物誌」を長年にわたって執筆してくれた。
 大柏川第一調節池(通称:北方遊水池)は豪雨などの際に大柏川の水を越流堤から引き込み、下流の地域を洪水から守る役目をもつ。平常時の利用については、市民や専門家の運動により 、人工の遊具や施設をつくらない、自然のままの状態で残すことが決まった。
 この緑地について、「1年を通しての自然の調査が行われていないのではないか」と思い続けていた山アさん。この12月から一人で観察活動を開始した。12月1日午前、気温14度と比較的穏やかな日に緑地全体を回り、生き物や池の状態を観察して、撮影した。今後、立春や夏至、大寒といった「二十四節気」の期間をめやすに、1年間にわたって調査を行い、その状況を掲載した「大柏川第一調節池緑地だより」 を毎月2回発行することにした。
 第1号は「小雪」(11月22日〜12月6日)の期間である12月1日付けで発行した。「『小雪』は冬といってもそんなに寒くないという意。生き物は次の季節に向け、越冬準備が完了する頃。温暖な日にはキタテハやヤマトシジミが飛ぶ。冬鳥も大方顔をみせる頃」という前文は簡潔でわかりやすい。観察記録では、植え込みのアカツメクサの群落について詳しく解説しているほか、冬羽のハクセキレイや水生植物の冬越しなどを写 真と一緒に紹介している。緑地内にある池(貯留池)の変化についても記述している。最後には、緑地内で「絶好の秋の風景」が撮れるおすすめスポットも紹介した。
 「だより」はA4判2ページ。大柏川ビジターセンターに置いて、訪れる人に配布している。

(2018/12/10)


◆第2号(12月13日発行)−大雪−(12月7日〜12月21日)
 大雪には太平洋側では晴れの日が続く。本州の地形的宿命による。初霜が降りると、生き延びたバッタ類やトンボ類が死滅する。
・「大柏川第一調節池緑地」の概説 2008年1月19日開園。面積8.7ヘクタール。ほか
・生物生存調査をすることになったきっかけ
・注目の生き物
 セイバンモロコシの植生。一度刈り取られても、再び茎を伸ばす。とにかく子孫を残さねばという営み。
 クソミミズを発見。ミミズの生態を解説。
・冬のフレーム(おすすめの写真)は「ネムノキ」。

◆第3号(12月22日発行)−冬至−(12月22日〜1月5日)
 冬至は1年のうちで夜が一番長い日。寒さに向かうが、日脚は一日一日伸びる。生き物の冬越し、寒さの自然現象を観察。
・注目の生き物
 トベラ。常緑の木で、12月初めには丸い実が3つにはぜて、黄から赤色の種子が見える。花は晩春から初夏に咲く。
 クリオオアブラムシ。カメムシの仲間、生態は複雑。花や野菜を栽培するひとには害虫。薬一吹きでいなくなる。
 ツバキとサザンカの見分け方を記述。
・冬のフレームは「ヨシの取り跡を核に張った氷」。

◆第4号(2019年1月6日発行)−小寒−(1月6日〜1月19日)
 小寒は寒さが本格的になり、厳寒期を迎える。松の内もあけ本格的な社会生活が始まる。
・寒さの自然現象。日本列島の本州は、太平洋側は晴天が続き、日本海側は降雪が続く。関東地方では冬晴れが続く。寒さ対策をして冬の自然観察を楽しもう。
・注目の生き物
 トビイロマルハナノミの生態。体長4ミリ程。緑地の南土手の低木林に多数見つかる。
 霜柱。地面の下にできる細い氷の柱。下総台地や関東の広い地域でできる。
 草原(クサハラ)の観察。刈り取りの時期、回数、場所によってその後の植生が違ってくる。
・冬のフレームは「地表で冬を過ごす小さな植物の体にできた氷(霜)」。

◆第5号(2019年1月20日発行)−大寒−(1月20日〜2月3日)
  寒さが本格的になり、厳寒期を迎える。
・注目の生き物
 ハンノキの冬。夏に出来た花は、厳冬に開花する風媒花。
 ハンノキの果実と球果
 春の七草。「セリ、ナズナ、ゴキョウ、ハコベ(ら)、ホトケノザ、スズナ、スズシロ(これぞ春の七草)」という覚え方が一般 的。

◆第6号(2019年2月2日発行)−立春−(2月4日〜2月18日)
 春と冬の分岐点の日。生き物の冬越し、寒さの自然現象の観察は終に近づく。
 冬の節分の翌日が立春。節分の風習などを紹介。これからの観察では、冬を過ごした植物と夏の植物との土手の陣取り合戦が始まる。アオカモジグサやカモジクサ、スイバなどが成長する。続春の七草はミドリハコベ、七草いろいろでは船橋の某デパートの七草セットの商品を観察。
 フレーム(おすすめの写真)は1本の枝についたチョウセンカマキリの卵嚢、クモの越冬、ミノムシの子供の風景。

◆第7号(2019年2月19日発行)-雨水- (2月19日〜3月5日)
春先に姿を見せる成虫で越冬するチョウの紹介。ウラギンシジミやモンシロチョウなど。 カエルではニホンアカガエルやアズナヒキガエルを取り上げた。アズナヒキガエルの解説は長文で、興味深い。
 このほか、この時期の桃の節句について。旧暦の3月3日は今の暦では4月7日頃で、まさに桃の花が咲いている季節だった。言葉だけが残ったという事例。草餅の材料となるヨモギの紹介や甘酒、酵素についても記述している。

◆第8号(2019年3月11日発行)−啓蟄−(3月6日〜3月20日)  生き物にとって生気あふれる季節の到来。草原の疎らな地面 をみてみる。  クロヤマアリは黒くて目立つアリ。アリの目線と同じに地面 に這ってみると、巣の整備と新しい坑道作りをしているらしい。背中に光沢があるマルガタコミムシはごく普通 に見られる種類。啓蟄を地で行くように這い出してくる。 ノミバッタは黒くて小さなバッタ。成虫越冬の少ないバッタの中で、成虫で越冬するため、この時期から活動するという。  野原の花では小さな花をつけるホトケノザ、オオイヌノフグリ、セイヨウタンポポ、ヒメオドリコソウを紹介している。

◆第9号(2019年3月23日発行)−春分−(3月21日〜4月3日)
 春の彼岸は生物活動の幕開けでもあり、人間にとっては過ごしやすい時期でもある。
 お帰りなさいツバメでは、例年3月中・下旬に戻ってくるツバメの生態を解説。
 地下生活者のアズマモグラの暮らしも紹介。
 水温もあがってきた池ではモツゴ、ヨシノボリの仲間のほか、カダヤシ(メダカに似ているが、外来種)が観察され、詳しく説明している。
  フレーム(おすすめ写真)は冬でも花を咲かせて子孫を残そうというたくましいセイヨウタンポポ。

◆第10号(2019年4月3日発行)−清明−(4月5日〜4月19日)
 日本では新学期が始まる。新入学、新就職など人生の節目の時期。自然の生き物同様、声援を送る。水中で越冬していた生き物が活発化するときでもある。
 タモロコ(コイ科)は口が小さいことからクチボソとも言われる魚を詳説する。
 タチツボスミレは裸地に紫色の小さな花をつける。3月になると急に成長する。ツマグロヒョウモンといった蝶類の幼虫がついていることもある。
 カラスノエンドウは今が盛り。その周りにはいろいろな動植物が見られ、今が観察のチャンスです。

◆第11号(2019年4月17日発行)−穀雨−(4月20日〜5月5日)
 この時期、天候に恵まれれば植物の生育は良く、それに依存する動物も繁栄する。
 アシ(葦) は適応能力が大きく、浅い池、小川、湿地、空地などに生える。管理には厄介は植物。
 水面に広がるサヤミドロ類はさわってみると、ぬるぬるして、指にまとわりつき、堅さを感じない感覚が特徴。
 コガタルリハシム(ハムシ科)が南の土手の葉の付け根に集まって生殖活動をしている。
 ギシギシは湿ったところ、道端などに生育する。
 ハリギリが南土手西に芽吹き時期。

◆第12号(2019年5月3日発行)−立夏−(5月6日〜5月20日)
 目に優しい青葉と花、年間を通して最良の季節。
 ケナシチガヤは、萱の小さいのを稚萱といい、それに節に毛がないことから、こう呼ばれる。南川土手下通 路のアスファルトにそって生育していた。
 池の隣の大柏ではたくさんのカモを見る。カルガモは1年中見られる留鳥の仲間です。
 東土手の南はずれに近いヤナギ類の木とフェンスの間に、ゴミグモの巣をみつける。
 ヒメセアカケバエはマツや南東の樹林地などの花のある梢のまわりを雄が群をなして 飛ぶ。雌が花に来るのを待ち構えている。

◆特別号 -1-(2019年5月13日発行)
 『ツバメってどんな鳥』
 春から夏にかけ、大柏川第一調節池緑地のビジターセンターには多くのツバメが巣を作る。しかもすぐ目の前なので観察は容易である。今号ではツバメの生態を特集。
  《内容を列記》
・ツバメの体
・なぜ巣のひさしのまわりにひもを張るのか
・巣
・抱卵
・ヒナに餌(給餌)
・糞分析 ツバメは何をひなに食べさせているか、糞から集めた昆虫破片、ツバメが補足する最小の大きさ、糞分析と糞分類


◆第13号(2019年5月20日発行)−小満−(5月21日〜6月5日)
 植物や動物が活発に動き出す季節。カメムシの種類のエサキモンキツノカメムシの生態について詳述。ミズキの葉の裏側で子育てに励む昆虫に視線を向ける。
 また園内でよく見られるヤセウツボの観察の第2弾。
 昆虫ではシオカラトンボやキマダラカメムシについて解説。シオカラトンボは雄の成虫の腹部が塩をふいたように白くなることから、この名がついた。この池にはかなり生息しているというから、見かけることもあるかも。

◆第14号(2019年6月4日発行)−芒種−(6月6日〜6月21日)
 昆虫も多く現れる時期で、それに合わせてツバメ、ムクドリなどが子育てに昆虫や小動物を捕る。稲作地帯では雨季が来る。
 アオモンイトトンボやアジアイトトンボ、オオアオイトトンボの生態や個体の違いを説明。
 虫を集めているムクドリを観察。
 サクランボをつけるオオシマザクラの魅力を解説する。
 このほか、カマキリの幼虫の観察、今が旬のヒメコバンソウやニワゼキショウの果 実を紹介。

◆第15号(2019年6月20日発行)−芒種−(6月22日〜7月6日)
 関東地方の梅雨入りは6月7日。全国的に降雨があり恵みの雨となります。市川市は関東平野の南に位 置して、山もなく平坦地なので天災の被害の少ない地域ですが、天災の無いことはありません。
 ネム(合歓)ビジターセンターの東側の自転車置き場近くにネムの花が咲かせた。
 日陰で白い花を咲かせるドクダミについて、詳細に説明。
 ヤゴ救出=「ぼっけ生きもの倶楽部」と隣の市民プールで恒例のヤゴの救出作業。
 ネジバナやヒルザキツキミソウの特徴を紹介する。

◆第16号(2019年7月5日発行)−小暑−(7月7日〜7月22日)
 1年の半分が過ぎた。お盆を迎えるが農業では草むしり、病・害虫の防・駆除など多忙な時期なので、休めず、それで1ヶ月遅れのお盆(旧盆)にしたのでしょう。
 怪物発見=ビジターセンター西側の立ち入り禁止の縄張りの中に、乾燥したウシガエル の遺体が。八幡5丁目ではヒキガエルの残骸も。
 タヌキが住宅街を動き回る。
 ネムの開花がみられる。
 6月22日に草刈を行う。浅い池をつくれば、ヨシやガマ類が繁茂するのは当たり前で、それが自然です。 見た目(都市公園)がいいと思う人の理解を得る必要があります。
 ヨシ(葦)、ヒメガマ(姫蒲)、カルガモの番などを紹介。

◆第17号(2019年7月20日発行)−大暑−(7月23日〜8月7日)
 多くの学校は夏休み。 暑いですが、外に出て自然に親しみましょう。7月下旬にニイニイゼミ、やや遅れてアブラゼミが鳴き始める。市川の北部の樹林地ではクマゼミを聞くこともできるかも。
 チョウトンボはこの地域を代表する昆虫の一つ。南側の土手の樹木の有る所では乱舞している。なかなか見られない光景。
 このほか、魚のモツゴ、アカシキといイネ科の植物、コガネグモの生態など、ここのスペースでは書き切れないほど充実した解説となっている。

◆第18号(2019年8月5日発行)−立秋−(8月8日〜8月22日)
 これから本格的夏が来るのに、“立秋”とは一番違和感がある節気かもしれません。暑さを乗り切りましょう。
 少し早い秋の七草の紹介。
 他の植物ではハギ(萩)、オオバナニススキ(薄)、キキョウ(桔梗)、ナデシコ(撫子)、オミナエシ(女郎花)、クズ(葛)、フジバカナなど、馴染みのあるものでは概説している。
 「なぜ動植物の名前を覚えるの?」では著者の考察が興味深い。

◆第19号(2019年8月20日発行)−処暑−(8月23日〜9月7日)
 学校の夏休みも終りに近づく頃です。朝夕はしのぎやすきなりますが、日中は暑く残暑の感があります。
 植物ではイネの始まりや変遷などを説明。
 昆虫ではアキアカネとナツアカネの比較観察。迫力有る写真が掲載されている。

◆第20号(2019年9月6日発行)−白露−(9月8日〜9月22日)
 これからが本当の秋=秋の果実や食材が出回る、ススキの出穂、セイタカアワダチソウの開花などで生きものの営みを知る人も多いでしょう。
 タイワンシジミ類がかなりの密度で生息していることを教わる。このため、タイワンシジミとマシジミやヤマトシジミと比較考察。
 ツユクサが東門近くの法面で、茎を伸ばして花を咲かせていた。日陰にならないよう、他の植物に寄りかかりながら茎を伸ばしていた。
 “テンツキ”という和名をもつヤマイについて生態を観察。
 秋の昆虫、イナゴ・バッタについても紹介。

◆第21号(2019年9月20日発行)−秋分−(9月23日〜10月7日)
 台風15号上陸=9月9日午前5時頃、千葉市付近に上陸。遊水池では枝折れや倒木がわずか出ました。
 ヒガンバナ は彼岸の頃になると咲く。葉を出さないで花が咲く不思議な植物だ。彼岸花の群生や果 実などを紹介している。
 自動測定器を4月から使って測ってきた当地の気温と湿度。8月のデーターを、船橋アメダスと比べてみると、最高気温が1〜2度高いことになった。市川の市街地と比較すると、2度Cほど低いはず。
 ハイイロゲンゴロウやウシガエルの幼生、スジエビなどの棲息なども紹介。

◆第22号(2019年10月7日発行)−寒露−(10月8日〜10月23日)
 ドングリをテーマに解説。ドングリ(団栗)というのはブナ科のカシやクヌギ、ナラなどの堅果 の総称。
 ドングリの生(ナ)る木=ブナ科、クヌギ、コナラ、マテバシイ、シラカシ、スダジイの特徴や自然の営みなどについて、写 真入りで詳細に説明する。

◆第23号(2019年10月21日発行)−霜降−(10月24日〜11月7日)
 この時期、生き物は冬支度たけなわ。冬越しの動植物を観察。
 シマスッズメノヒエ。南側の池の西の通路で見られる南アメリカ産の帰化植物。刈られても刈られても寿命のある限り子孫を残そうとする。
 タヌキの糞を分析して、たべものを調べる。中にはアメリカザリガニ、バッタ類、エンマコオロギカマキリ類、トノサマバッタのハネなどがみつかっている。

◆第24号(2019年11月7日発行)−立冬−(11月8日〜11月21日)
 昨年11月から始まったこの調査もちょうど一年。秋の景観を数多く紹介。セイタカアワダチソウ、マルカメムシ、ウラナミシジミ、ヒメアカタテハ、オオハキリバチ、ニシシギなど。
樹木の枝に大きく網を張るジョロウグモが生息するということは、それだけこの池まわりには餌となる昆虫が多くいるということ。
 オオジシバリがヨシなどが刈られたあとから、生え始めて、花を咲かせている。花期は翌年の4月から6月だが、台風が過ぎたあとの「狂い咲き』とか。植物にとっては生き残りをかけた適応といえるかもしれない、と解説している。

◆調査をしている 山アさんは、2020年11月まで調査を続けたあと、2年間の結果 を「本報告」にまとめる意向。大柏川第一調節池だよりの発行も終わる。(2020/03/29)